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2010/09/01

平成23年度概算要求に見る知財第1回:特許庁「知的財産政策関係」(特許特別会計)

 平成23年度政府予算の概算要求が各省庁から発表されている。知的財産に関する予算は、各省庁がバラバラに要求・計上するのではなく、首相が本部長を務める知的財産戦略本部が行うべきものであると考えるが、実際には、特許庁、経済産業省、文化庁、文部科学省、総務省、農林水産省、外務省、等がそれぞれの所管事項について、要求、計上している。それぞれの概要と当方が注目するポイントを紹介したい。今回第1回は特許庁を取り上げる。

 平成23年度知的財産政策関係概算要求の概要によれば、要求額は1,176億円(独立行政法人工業所有権情報・研修館への交付金103億円含む)であり、平成22年度予算1,191億円から15億円の減額(-2.8%)となっている。なお、特許特別会計については、政府の行政刷新会議を中心に行われている特別会計の事業仕分けの対象としてヒアリング等が行われているとのことであり、概算要求に盛り込まれた事業、要求金額についても今後見直しが行われることも予想される。

 今回の概算要求における重点項目としては、平成22年度と同様「世界最高水準の特許審査の実現」、「知的財産権制度の国際調和の促進と模倣品侵害への対応」、「地域・中小企業の知的財産権活用に対する支援」の3点が掲げられている。当方は以下の4つを注目ポイントとして挙げたい。

■注目ポイント1:ワンストップサービス窓口「中小企業等知財支援センター」の設置

 重点項目「地域・中小企業の知的財産権活用に対する支援」の主要施策の一つとして「ワンストップサービス窓口の設置」(中小企業等知的財産活用支援事業)に、新規に20.0億円が計上されている。知的財産推進計画2010においても、短期・中期の目標として盛り込まれていたものである。
 具体的には、中小企業に対して、アイデア段階から特許取得、事業展開に至る各段階における相談に対しての一元的な窓口となる「中小企業等知財支援センター」を都道府県に設け、様々な専門家・支援機関と共同でワンストップサービスを提供し、知財活用・新規事業化を支援するとされている。
 具体的なイメージは、産業構造審議会知的財産政策部会の第14回(平成22年5月12日開催)における資料1「知財を活用したイノベーション促進のための具体的方策について」[PDF2,075KB]別紙「中小企業・大学等に対する知財活用支援の拡充」[PDF563KB]に詳しい。

 もっとも、これは従来の「課題解決型」相談・コンサルティング事業(平成22年度予算8.1億円)等の中小企業支援策を整理統合したものであるとも言え「ワンストップサービス窓口の設置」があらためて目玉になること自体、今までが「ワンモア」(1軒目の相談窓口で終わらず2軒目に行くことになる)であったことの裏返しという面もあるだろう。
 また、知的財産推進計画2010では、ワンストップ窓口についてその開設だけではなく「多様な相談に適確に対応できる人材を育成し、併せて地方自治体や地域における支援機関との連携を強化する。」としており、これこそがワンストップ窓口が有効に機能するかのポイントであろう。

■注目ポイント2:システムの整備・最適化

 重点項目「世界最高水準の特許審査の実現」の主要施策の一つとして平成22年度と同様「システムの整備・最適化」が挙げられ、その趣旨説明も以下のようにほぼ同文であるが、要求額は20.7億円と平成22年度予算の38.2億円から大幅な減額となっている。
*説明文---------------
 「特許庁業務・システム最適化計画」に基づき、外部ユーザーへの情報提供の飛躍的向上、ホスト・コンピュータ(レガシー・システム)からの脱却を目指し、「特許庁運営基盤システム」の開発を継続します(*下線部分は平成22年度は"本格的な開発に着手します")。
 また、世界最高水準の的確かつ迅速な審査を実現するための環境整備として、「特許庁新検索システム」の開発に向けた準備を行います(*下線部分は平成22年度は"準備を開始します")。同システムの開発に当たっては、大学・企業等のイノベーション促進にも資するように可能な限りオープンな形式を採用し、特許情報とグローバルな技術情報をシームレス(継ぎ目無く)に検索できるようにします。
-----------------------

 当初予定より大幅に遅れている特許庁のシステムの整備・最適化をめぐっては、先の贈収賄事件の記憶が鮮明なところであるが(関連記事:特許庁システム最適化計画の再開に向けて-「特許庁情報システムに関する調査委員会」報告の提出)、今回の大幅減額がこれと関係するものなのか、そもそも当初予定の通りなのかは明らかではない。

 新たに平成22年8月23日付けで就任した岩井良行特許庁長官は、平成22年8月31日付けで特許庁ホームページに掲載された就任挨拶において「特許庁業務・システム最適化計画については、まさにこれからが正念場です。新システムは、これからの産業財産権行政の基幹として重要な役目を担うとともに、制度の利便性向上に向けた諸施策の実行に欠かせません。第三者委員会に御指摘いただいた実施体制を始めとしたあらゆる点について総点検し、皆様の信頼を再び取り戻すべく、特許庁一丸となって取り組んでまいる所存です。」と述べている。ぜひ積極的な取組を期待したい。

■注目ポイント3:特許関係料金の値下げの検討

 「その他」の項には「特許関係料金について、経済産業大臣からの料金引き下げの指示を受け、イノベーション促進の観点を踏まえた値下げの検討を行っていきます。」との一文がある。
 具体的な引き下げ案は、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第30回(平成22年7月5日開催)の資料4「特許料金の見直しについて」[PDF442KB] にて示されているが、引き続き検討されているものであり、今後の議論の成り行きに注目したい。

■注目ポイント4:事業仕分け・行政事業レビューの結果反映

 平成22年5月26日に行われた経済産業省の行政事業レビュー公開プロセスにおいては、特許特別会計の「出願適正化等指導事業委託費」中の「中小企業産業財産権出願等支援事業」と「中小企業等特許先行技術調査支援事業」については抜本的改善、「地域中小企業知的財産戦略支援事業」は廃止と判定された。

 また、その後公開された「行政事業レビューシート」の特許特別会計においても、自己点検・見直しの余地、として以下の通り記載されている。
(1)中小企業産業財産権出願等支援事業[PDF]
→産業構造審議会知的財産政策部会における議論や知的財産推進計画2008~2010による提言及び行政事業レビューの指摘を踏まえ、中小企業に対する知財に関して一層充実したワンストップサービスを提供していくための体制の整備等を図るための「中小企業知財支援センター(仮称)」を設置し相談事業を集約し、契約単位もさらに分割して実施する方向で検討する。
(2)中小企業等特許先行技術調査支援事業[PDF]
→本事業は審査請求料金引き上げを契機として開始されたものであることから、今次の料金見直しの動向に応じて、必要性を再検証することもありうる。一方で、行政事業レビューでの指摘を踏まえ、平成23年度は、上限件数を20件から3件に変更する。
(3)地域中小企業知的財産戦略支援事業[PDF]
→行政事業レビューの結論を踏まえ、22年度にそれまでの成果をとりまとめ、事業を廃止する。

 今回発表された概算要求資料にはこのような細かい記載は無いが、前述のワンストップサービス窓口の設置を見る限り、少なくとも(1)産業財産権出願等支援事業、(3)知的財産戦略支援事業、については、自己点検・見直しの余地通りに反映されたと考えられる。(2)特許先行技術調査支援事業、についても情報の開示を望みたい。


【関連リンク】

◆特許庁:平成23年度知的財産政策関係概算要求の概要
http://www.jpo.go.jp/torikumi/hiroba/h23chizai_gaisanyoukyu.htm

◆特許庁:産業構造審議会知的財産政策部会
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/tizai_seisaku_bukai.htm

◆特許庁:産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/tokkyo_seido_menu.htm

◆経済産業省:平成23年度経済産業省の概算要求等について
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/2011/index.html

◆経済産業省:行政事業レビュー「公開プロセス」
http://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/koukaiprocess.html

◆経済産業省:行政事業レビューシート公開 特許特別会計
http://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/tokkai.html

◆知的財産戦略本部:知的財産推進計画2010[PDF]
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/2010chizaisuisin_plan.pdf

◆行政刷新会議:事業仕分け
http://www.cao.go.jp/gyouseisasshin/contents/01/shiwake.html

以上

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